ほかげ Shadow of Fire

2018/製作:海獣シアター/新日本映画社配給
2023 年/日本/95 分/ビスタ/5.1ch/カラー
©2023 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

〈解説〉
『野火』、『斬、』、そしてーー
戦争を民衆の目線で描き、現代の世に問う祈りの物語。

『鉄男』(89)でのセンセーショナルな劇場デビュー以後、世界中に熱狂的ファンを持ち、多くのクリエイターに影響を与えてきた塚本晋也。戦場の極限状況で変貌する人間を描いた『野火』(14)、太平の世が揺らぎ始めた幕末を舞台に生と暴力の本質に迫った『斬、』(18)、本作ではその流れを汲み、戦争を民衆の目線で描き、戦争に近づく現代の世相に問う。舞台は『野火』の直後、終戦後の闇市。空襲で家族を亡くし食べ物を盗んで暮らす子供と、身体を売ることを斡旋された女、戦地から生き延び帰還した男たちの目を通して、戦争で奪われたものと、絶望と闇を抱えたまま混沌の中で生きる人々を、映画はしたたかに描き出す。

主演は、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」(23)でヒロインを演じ、今最も活躍が期待されている俳優、趣里。孤独と喪失を纏いながらも戦争孤児との関係にほのかな光を見出す様を繊細かつ大胆に演じ、戦争に翻弄されたひとりの女を見事に表現した。片腕が動かない謎の男を演じるのは、映像、舞台、ダンスとジャンルにとらわれない表現者である森山未來。飄々としながらも奥底に蠢く怒りや悲しみを、唯一無二の存在感で示している。第44回ぴあフィルムフェスティバルグランプリ受賞作品『J005311』(22)の監督でもある河野宏紀は500人以上の応募の中から選ばれ、復員して間もない若い兵士を演じた。また、『ラーゲリより愛を込めて』(22)やNHK大河ドラマ「青天を衝け」(21)に出演している子役・塚尾桜雅が戦争孤児を演じ、一度見たら忘れられないその瞳で物語をより深く豊かに彩った。
人間の中に潜む暴力、分かち難く絡む死と生を描いてきた塚本晋也が今を生きる全ての者に問いかける祈りの物語。

女が暮らす半焼けの居酒屋、片腕が動かない男との旅、
空襲で家族を失った子供の目から見た、戦争と人間。

(略筋)
女は、 半焼けになった小さな居酒屋で1人暮らしている。
体を売ることを斡旋され、戦争の絶望から抗うこともできずにその日を過ごしていた。
空襲で家族をなくした子供がいる。 闇市で食べ物を盗んで暮らしていたが、ある日盗みに入った居酒屋の女を目にしてそこに入り浸るようになる。
復員して間もない若い兵士が客として居酒屋を訪れるが、久しぶりに熟睡できたと戦争孤児とともに女の家にいついてしまう。3人は仮の家族のような様相になるが、若い兵士の様子がおかしくなり、その生活も長くは続かなかった。
女と子供は互いに切り離せない仲になっていくが、ある日、闇市で暗躍していたテキ屋の男から仕事をもらったと言い残し、 悲しがる女を置いて 子供は旅に出てしまう。
テキ屋の旅の目的も 知らされないままに… 。

[スタッフ]
監督・脚本・撮影・編集・製作:塚本晋也
助監督:林啓史 
照明:中西克之 
音楽:石川忠 
音響演出:北田雅也 
ロケーションコーディネート:強瀬誠 
美術:中嶋義明 
美術デザイン:MASAKO
衣装:佐々木翔 
ヘアメイク:大橋茉冬
アクション指導:辻井 啓伺
軍事監修・指導:金子昌弘
録音/撮影助手:古賀公章
監督助手:西牧大輝 
     圡坂奈穂
制作:佐藤洋介
ミニチュア造形:塚本敦子
コンポジット/編集助手:長岡広太

製作:海獣シアター 
配給:新日本映画社

[キャスト]
女:趣里
テキ屋の男:森山未來
戦争孤児:塚尾桜雅
復員兵:河野宏紀
中年:利重剛
優しそうな男:大森立嗣